FXのデイトレーダーやスイングトレーダーにとって最も重要なスキルの一つは、その日トレードするのに最適な通貨ペアを選択するスキルです。このページで解説する通貨ペアの選び方のテクニックをマスターすれば、値動きの無い通貨ペアに捕まってしまうことが少なくなり、美味しい値動きに遭遇する確率が劇的にアップすることでしょう。
FXのデイトレードでは通貨ペア選びが重要
どの通貨ペアを選択するか?という問題は、全てのFXトレーダーにとって最も重要な問題の一つです。表題では「デイトレードでは」と書きましたが、スイングトレードでも長期投資でも、スキャルピングでもそれは同じです。
1つの通貨ペアでエントリーすると、その資金は他の通貨ペアのトレードでは使えません。動きの無い通貨ペアにエントリーしてしまえば動きのある通貨ペアでエントリーできなくなってしまい、大きな機会損失になってしまいます。
「自分はドル円しかトレードしない!」と決めてドル円のスペシャリストになっても良いです。しかしそれではFX市場のどこかで毎日のように起きる大きな値動きを逃してしまうのでもったいないです。
FX市場では全ての通貨ペアが互いに影響し合って繋がっています。その時一番動きをリードしている通貨を選び、さらにそのなかで一番チャンスの多そうな通貨ペアを選んでトレードするというアプローチがベストだと思います。
株のデイトレードする場合には、まず森を見てから木を見ることで、その日に一番チャンスの多そうな銘柄がわかります。たとえば、相場全体の雰囲気や出来高から、株式市場が活発になっていることが分かっているとします。しかし資金にも集中力にも限りがあるので、慎重に1つか2つの銘柄に絞り込んでトレードすることになります。
まずはセクターごとに比べてみて、どのセクターが動いているのかを調べます。自動車や銀行などのセクターを比べるのです。最も動意のあるセクターが分かれば、次はそのなかで最も出来高が増えていて、動意がある銘柄をピックアップします。
このように株のデイトレ銘柄選びでは、
相場全体 → セクター別 → 銘柄別
のように、まず森をみてから木を見るようにして、その日のデイトレードで有利な銘柄を選択します。
FXデイトレードでもこれとよく似た考え方で通貨ペアを選択することになります。
様々な通貨ペアの動きを比べる
トレードすべき通貨ペアを選択するには、広く様々な通貨ペアを見なければなりません。ストレート通貨ペアだけでなく、クロス通貨ペアの分析も必要です。
FX市場において全ての通貨ペアはつながっています。たとえば、どこかの超大口の機関投資家がユーロを買ってドルを売りたいと思ったとしても、必ずしも彼らはユーロドルを買うとは限りません。
彼らは自分たちのやっていることを隠すために、円/英ポンド/豪ドル/カナダドルなど、それ以外の通貨ペアを使って「ユーロ買い/ドル売り」相当のポジションを作る場合が多いと思います。
ですからユーロを分析するにはユーロドルだけではなく、ユーロ円、ユーロポンド、ユーロフラン、ユーロ豪ドル、ユーロフラン、ユーロカナダなど様々な通貨ペアをまとめて分析する必要があります。
また、様々な通貨ペアを比べることでその日、その週のFX相場をリードしている通貨はなんなのか?が見えるようになります。
このテクニックを全く知らずにドル円やユーロドルだけを見ている人は動かないポジションに捕まってしまって美味しい値動きをみすみす逃してしまうことになるでしょう。
クロス通貨
例えば何らかの理由で米ドル買いのポジションを持ちたいとします。米ドルを買うにはドル円を買う以外にもいろんなルートがあります。
USD/JPY 買い
USD/CAD 買い
USD/CHF 買い
EUR/USD 売り
GBP/USD 売り
AUD/USD 売り
といったルートで「米ドル買い」のポジションを持つことができます。どの通貨ペアを選ぶか迷うことがあると思います。そんな時はクロス通貨ペアを分析することで根拠のある意思決定ができるかもしれません。
例えば、ドルが強いのでUSD/JPYかUSD/CADのどちらかを買おうと思っているとします。
どっちがいいでしょう。
この2つのチャートを見るだけでは決められません。
そこでCAD/JPYのチャートを見てみます。
CAD/JPYはレンジ相場の最中であり、レンジの上の方を売りエリア、下の方を買いエリアだとすると、売りエリアにさしかかっていると言えます。
ということは、長期的にはどうなるか分かりませんが、短期的、中期的にはCAD/JPYはレジスタンスラインに頭を押さえられて下げるのではないかと予測することができます。
CAD/JPYが下げるということは、カナダドルが弱くなり、日本円が強くなるということです。
ドルを買うのであれば、ドルが相手通貨に対して上がってほしいわけですから、なるべく今後弱まりそうな通貨を相手通貨としてドルを買うほうがよいということになります。
この場合のカナダドルと日本円の比較だと、カナダドルの方が弱まりそうなことが予測されるので、USD/JPYよりもUSD/CADを買う方が有利なのではないかということになります。
「デイトレードする銘柄を選ぶ」というテーマとは若干ずれているかもしれませんが、通貨ペアを選ぶ際にはこのようにクロス通貨ペアを分析して決めることがあります。
通貨ペアの仕組みがいまいち理解できない!という方は、以下の記事をどうぞ
ちゃんと理解してますか?為替レートの読み方と通貨ペアの売買
FX初心者講座~FXとは?そしてFXで勝つための具体的な方法
主要な通貨ごとにページを作る
毎朝たくさんのチャートをその都度開いて動意のある通貨ペアを探すのは面倒です。
主要な通貨ごとにいくつかの通貨ペアのチャートをまとめたページを作っておくと便利です。
- 米ドル
- ユーロ
- 日本円
- ポンド
- スイスフラン
- カナダドル
- 豪ドル
この7つの通貨を押さえておけば十分だと思います。
私はMT4でこの7通貨のページを作ってあります。MT4では「プロファイル」や「チャート組」と呼ばれるもので、チャートの並びや設定を記憶しておくことができる便利な機能です。
下の画像は日本円のページで、以下の通貨ペアのチャートが並んでいます。パッとみただけで円が強いのか弱いのか、ごちゃごちゃなのかが分かります。
- USD/JPY
- GBP/JPY
- EUR/JPY
- AUD/JPY
- CHF/JPY
- CAD/JPY
7つの主要通貨でこのようなページを作っておくと、毎朝の分析が楽にスピーディーに行えます。私は各通貨に対して次のような通貨ペアのチャートを並べています。
米ドル
- EUR/USD
- GBP/USD
- JPY/USD
- AUD/USD
- CHF/USD
- CAD/USD
日本円
- USD/JPY
- GBP/JPY
- EUR/JPY
- AUD/JPY
- CHF/JPY
- CAD/JPY
ユーロ
- EUR/USD
- EUR/GBP
- EUR/JPY
- EUR/AUD
- EUR/CHF
- EUR/CAD
英ポンド
- EUR/GBP
- GBP/USD
- GBP/JPY
- GBP/AUD
- GBP/CHF
- GBP/CAD
豪ドル
- AUD/USD
- EUR/AUD
- GBP/AUD
- AUD/JPY
- AUD/CHF
- AUD/CAD
スイスフラン
- USD/CHF
- EUR/CHF
- GBP/CHF
- AUD/CHF
- CAD/CHF
- CHF/JPY
カナダドル
- USD/CAD
- EUR/CAD
- CAD/JPY
- GBP/CAD
- AUD/CAD
- CAD/CHF
MT4を使って以上のようなページ(プロファイル)を用意しておくと便利です。
MT4を使ってプロファイルを保存する方法は以下の通りです。
1.上で解説したようにチャートを6つ並べる。
2.ファイル - チャート組表示 - 名前を付けて保存 で「米ドル」など名前を付けて保存する。
このようにして簡単にプロファイルを保存することができます。
この手順で7つの通貨のプロファイルを作っておき、毎日トレードを始める時に全てのページにざっと目を通してトレードする通貨を選択します。
では、どのようにしてデイトレードする通貨ペアを選べばよいのでしょうか。
リーダーを見つける
7つの主要通貨のうち、どの通貨がFX市場をリードしているのかを見極めるところから始めます。
- 米ドル
- ユーロ
- 日本円
- ポンド
- スイスフラン
- カナダドル
- 豪ドル
各通貨のプロファイルができていれば簡単です。各通貨のページをざっと見ていき、各ページに表示される6つのチャートが同じ方向性なら、その通貨がFX市場をリードしていると言えるのです。
先ずはユーロから見てみましょう。
(画像のチャートはすべて4時間足です。時間軸の短いデイトレ向けに通貨ペアを選択する場合には5分足で分析します)
ダウントレンドのチャートとレンジのチャートがあってごちゃごちゃしています。
このように6つのチャートがそれぞれいろんな状態にあって同じ方向にトレンドが出ていない場合は、その通貨がFX市場をリードしているわけではないということが分かります。(もちろん、いま見ている時間軸ではということです)
次に米ドルを見てみます。
米ドルは全てのチャートが同じ方向にトレンドが出ています。米ドルが強く、FX相場をリードしていることが分かります。
「上がってるのと下がってるのがあるじゃん!」
と思うかもしれませんが良く見てください。
左側の赤枠で囲ったチャートは上から
EUD/USD
GBP/USD
AUD/USD
で並んでいます。これらはベース通貨が米ドル以外、クォート通貨が米ドルの通貨ペアなので、米ドルが強ければチャートが下降トレンドになる通貨ペアになります。
それに対して右半分の青で囲ったチャートは上から
USD/JPY
USD/CAD
USD/CHF
と並んでいます。これらはベース通貨が米ドルで、クォート通貨が米ドル以外の通貨ペアですから、米ドルが強ければチャートが上昇トレンドになる通貨ペアです。
ですから、全てのチャートで米ドルが強い方向にトレンドが出ていることがわかります。(長い目で見るとポンドドルだけはちょと微妙ではあります)
ということで、この時点で米ドルが強く、FX相場をリードしていそうだと分かったので、米ドル絡みの通貨ペアを選ぶべきだと分かります。
あとはその中でも特に強いトレンドが出ているUSD/JPY、AUD/USD、USD/CADあたりを選ぶことになります。
その3つの通貨ペアのうちどれを選ぶかとなると、先程解説したように、CAD/JPYやAUD/CADやAUD/JPYのチャートを見て判断することになります。先程のCAD/JPYの分析で見たように、カナダドルが弱まりそうな印象があったので、USD/CADの買い戦略は良いのでは?という感じになります。もちろん、3つともトレードしても良いですね。
ベース通貨/クォート通貨ってなんだ?という方はこちらの記事をどうぞ
以上、通貨ペアの選び方を解説してきました。前半は以上で終了です。
後半では
- 通貨の強弱を分析するテクニカル指標を使う方法
- MT4で簡単に7つの通貨のプロファイルを作る方法
- 便利な無料ツールの紹介
などを行います。
ここまでに解説したMT4の設定を作るのは手間です。そこで私が作ったプロファイルのファイルをお渡しします。MT4の指定されたフォルダにコピー&ペーストするだけで私と同じチャートの並びが一瞬で作れるので便利だと思います。そのほかにも関連する便利な無料ツールをご紹介します。
「通貨ペアの選び方 後半」の記事はメール講座の読者の方向けに公開しております。
登録したくださった方にはメリットがたくさんあります。
『攻めのトレード日誌エクセル版』
『チャートを使ったブレークアウト手法 後編』
『通貨ペアの選び方 後編』
『ラウンドナンバースキャルピング手法 後編』
などなど