この記事では、FXトレーダーにとって一番重要な通貨である米ドルについて初心者でもわかるように徹底的に解説します。
まず最初に米ドルの重要性を知っていただき、次にFXトレーダーが毎日最初に見るべきチャート、米ドルインデックスについて解説します。そしてアメリカ合衆国について理解したあと、最後に、米ドルの方向性を予測する方法を解説します。
米ドルは通貨の王様
為替の世界においていろんな意味で米ドルはナンバーワンの通貨です。
10年後には中国に追い抜かれているのかもしれません。しかし今はまだアメリカ合衆国が世界一です。
世界中の銀行は準備通貨として米ドルを大量に保有しています。
準備通貨とは、各国の中央銀行が市場介入などで為替相場を安定させるために保持している外貨のことです。
世界中の銀行が、準備通貨として米ドルを一番多く保有しています。そのパーセンテージは以下の通りです。
米ドル 61.4%
ユーロ 24.2%
円 3.86%
圧倒的に米ドルが多いのが分かります。
ロイターの記事より
外貨準備高として米ドルが圧倒的に多い理由は、米ドルが「安全」と見られているからです。
世界一の経済大国であるアメリカ合衆国の通貨だから安心感があるのでしょう。
また、世界一の債券市場である米国国債市場が米ドル建てであること、さらに金や原油といったコモディティも米ドル建てであることも米ドルが第一の準備通貨になっている理由です。
このように、米ドルは「安全な通貨」として分類されています。
世界中の人が市場で何らかの恐怖を感じると、米ドルに避難します。
自分の持っている金融資産がヤバいなと思ったら、とりあえず米ドルに換えておく。米ドルとはそういう通貨です。
お金の流れとリスクは密接に関係しています。
ハイリスクハイリターンとローリスクローリターンの考え方です。
欲が強く、大きなリスクを負えば、大きなリターンを得られるかもしれません。
一方、恐怖が勝ってリスクを小さくすれば、小さなリターンしか期待できません。
米ドルは投資家が感じている「リスク」のバロメーターのような存在です。
米ドルを中心に為替市場がバランスをとっているようなものですから、FXトレーダーとして成功したいなら、米ドルの動向をしっかりと掴んでおく必要があります。
米ドルが上がっているなら、他の通貨は下がるでしょうし、その逆もしかりです。
結構シンプルなものです。
米ドルインデックスとは
米ドルはあまりに重要なので、米ドルインデックスと呼ばれる指標があるくらいです。
米ドルインデックスとは、米ドルといくつかの主要通貨のバスケット(まとまり)を比較し、米ドルが強いのか弱いのかを示す指標です。
米ドルインデックスのチャートは、FXトレーダーにとって最も重要なチャートです。あなたが投資家であっても、短期トレーダーであってもその重要さは変わりません。
全てのFXトレーダーは米ドルインデックスを眺めるところから一日を始めるのが普通です。
今日の米ドルはどうなっているか、それを掴むことからFXトレーダーの一日は始まります。
ドル円チャートだけを見ても不十分です。そこから分かることは、ドルと円の関係だけです。
それだけでは足りません。
大切なのは、世界の主要通貨に対して米ドルが強いのか弱いのかを把握することです。
一日の初めに米ドルインデックスの動きを把握することで、為替相場全体の展望が開けて、どの通貨ペアをトレードすべきなのかといった重要なことを効率よく決めることができます。
米ドルインデックスにはいくつかの種類があります。
米ドルをどんな通貨バスケット(通貨のまとまり)と比較するのか、またその計算方法がそれぞれに異なります。
あなたが知っておくべきなのは2つの米ドルインデックスです。
- USDX
- USDOLLAR
USDX
米ドルインデックスで一番古く、一番有名なのはUSDXです。
1970年代に考え出された指標です。
USDXは米ドルと6つの主要通貨との関係を計算したものです。
6つの主要通貨の重要度により異なる重みをかけて計算されます。
ユーロを一番重視していて58%、日本円は14%、英国ポンド、カナダドル、スウェーデンクローナ、スイスフランという順番です。
USDXは一番有名な米ドルインデックスであり、インターネット上で無料で見ることができるので便利です。しかし、USDXは古いだけに基本的なところで欠陥があるとも言われます。
まず、計算の重みがヨーロッパに偏りすぎていることです。
ユーロとポンドで70%の重みです。
ヨーロッパの重みが7割というのは、現在の実情を反映していないように思います。
この指標の提供が始まった1970年代はそれでよかったと思うのですが、現状はどうでしょうか。
現在の為替市場の眺望は1970年代と比べると随分と変わりました。
ユーロはうまくいっていないと言われていますし、ヨーロッパの重みって7割も無いはずです。
次に、日本円の重みが14%というのは実情とは違うでしょう。
最後に、計算にオーストラリアドルが入っていないのも問題です。
オーストラリアドルはコモディティ通貨の代表格です。
※コモディティとは鉱物資源や農産物の市況商品のこと。
ほとんどのコモディティは米ドル建てですから、米ドルと豪ドルの関係は強いはずです。
それなのにコモディティを最も多く産出するオーストラリアの通貨を計算に入れないのは問題です。
とはいえ、USDXは多くのトレーダーが注目している指標なので注目する価値があります。
USDOLLAR
私のおすすめはFXCMが提供するUSDOLLARという米ドルインデックスです。
こちらはまだ若い指標です。だからこそ、現状の為替市場を反映している指標となっています。
USDOLLARの計算方法はかなりシンプルです。
ユーロ、英国ポンド、日本円、オーストラリアドルの4つの通貨を使い、それぞれ25%ずつ均等の重みをかけて計算され、米ドルとの関係を見る指標となっています。
USDOLLARはFXCMジャパン証券
の口座を持っていればリアルタイムチャートとして見ることができます。
ラインチャートでよければ、Yahoo Finance やGoogle FinanceでもUSDOLLARを見ることができます。
USDXとUSDOLLARでは数値が全く違います。
USDXは70~100程度の数値を行き来しますが、USDOLLARは10000を超える数値です。
計算方法が違うので数値は随分と違いますが、表現していることは同じです。
米ドルが他の主要通貨に対して強いか弱いかを表しているのです。
ただ、私はFXCMジャパン証券
のUSDOLLARの方が為替市場の現状をうまく反映していると思うので、USDOLLARを使っています。
アメリカ合衆国とはどんな国?
アメリカ合衆国は50の州、連邦区からなる連邦共和国です。
1776年に英国から独立して以来、世界最強の国として歩んできました。
アメリカ合衆国は世界最大の経済大国ですから、その調子次第で世界経済に大きな影響を及ぼします。米国の個人消費の増減が世界に与える影響はものすごく大きいと言われています。
アメリカ合衆国のデータ
- 面積
- 9628000㎢
- 人口
- 3億1670万人
- 人口密度
- 33人/㎢
- 首都
- ワシントンD.C.
- 大統領
- バラク・オバマ
- 通貨
- 米ドル(USD)
- GDP
- 15兆6500億ドル
- 主要な輸入相手国
- 中国、カナダ、メキシコ、日本、ドイツ
- 主要な輸出相手国
- カナダ、メキシコ、中国、日本
アメリカ合衆国の経済
米国は、一年間に15兆6500億ドルの付加価値を生み出す世界最大の経済大国です。
国としては世界で一番裕福なのですが、個人レベルで見ると、国民1人あたりのGDPは53000ドルで世界1位ではなく9位です。米国では貧富の差がけっこうあるようです。
ちなみに1人当たりのGDPの一位はヨーロッパのルクセンブルグで112000ドルです。
日本は38000ドルで24位です。
米国の主要産業は、航空機、自動車、通信機器、工業機械などです。
米国は物作りが中心であるイメージがありますが、実際にはGDPに占めるサービス業の割合が7割以上もあります。
米国は貿易赤字国として有名です。輸出額よりも輸入額の方が多いということです。
米国は世界最大の金融市場が集まっています。
ニューヨーク証券取引所(NYSE)は世界最大の株式市場、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)は世界最大の先物市場、そして米国には世界最大の債券市場もあります。
米国大統領選挙など米国国内のイベントは世界中の相場に影響を与えます。
もちろん、為替相場も例外ではありません。
米国の金融政策
連邦準備制度(Federal Reserve Board)が米国の金融政策を行います。
Federalの最初の3文字をとって「Fed」と呼ばれています。
これは日本の中央銀行に相当します。
金融政策とは、Fedが国に出回るお金の量や借りやすさをコントロールするものです。
Fedは他の国の中央銀行に比べて長期的な視野で金融政策を行っていると言われています。
Fedの主な目的は2つあります。
1つは物価を安定させること。
2つめは安定した経済成長を維持することです。
要するにFedは、国民の持っているお金の価値がなくならないように、
そして国民が仕事を失わないように大きな視野で米ドルを管理しているということです。
Fedを構成する機関にFOMCがあり、議長はジャネット・イエレンです。
FOMCの任務ははイケてる金融政策の意思決定をすることです。
FOMCはインフレと戦って長期的な米国の成功を実現するために2つの武器を持っています。
1つは公開市場操作、もう1つはフェデラル・ファンド金利という政策金利の調整です。
公開市場操作はFedが米国債などを買ったり売ったりすることです。
政策金利の調整は、Fedが他の銀行にお金を貸す時の金利を調整するものです。
米ドルを動かす原動力とは?
金と米ドル
米国のインフレなどが原因で米ドルの価値が下がってしまう危機感があると、投資家は「安全」を求めて金を買います。
他の金融資産と違い、金には「実在価値」があるからです。金はどこへ行っても金だし、いつの時代も金です。
ですから、金価格の上昇は、米ドルの価値が下がるサインとしてとらえられることが多いです。
米国の経済成長
米国経済が成長すると、基本的には世界中の投資家による米国への投資意欲が高まります。
米国の金融商品は米ドル建てですから、そこに投資するには米ドルが必要です。
ですから、米国の金融商品に対する需要が高まれば、米ドルへの需要が高まり、米ドルの価値が上がるということです。米国には世界最大の金融市場が集まっていますから、この影響は顕著に現れます。
世界中の経済成長
為替取引の大部分は米ドルが絡みます。
ですから、世界中の経済成長はすべて、米ドルの動きにつながります。
世界の国債利回りの推移
投資家は最高の利回りで資金を運用したいと考えます。
米国国債の金利が低く、他の国の国債利回りが高ければ、米国国債を売って他の国の国債を買う人が増えます。
そうなると米ドルが売られて米ドルの価値が下がります。
またその逆もしかりです。
金利の推移
為替相場の参加者は金利の推移に目を光らせています。
Fedが金利を上げそうなら米国国債などへの需要が高まりますので、米ドルの価値が上がる傾向にあります。
逆にFedが金利を下げそうなら米国から資金が流れ出す可能性があるので、米ドルの価値が下がる可能性が高くなります。
Fedの要人が発言する時、FXトレーダーは必死で耳を傾けます。
未来の金利動向についてポロっとネタをばらしてしまうことがあるからです。
米ドルに関わる重要な経済指標
- Non-farm employment change(NFP)とは
- 米国における、前月の非農業部門雇用者数のことです。毎月一回発表される雇用統計のひとつです。
- 米・四半期GDP
- 米国でどれだけの付加価値が生産されたかの集計です。3か月に1回発表されます。
- 米・小売高(Retail Sales)
- 小売レベルでの売上高の集計です。月に一度発表されます。
- 消費者物価指数(CPI)
- 一定の物やサービスの価格推移のこと。月に一回発表されます。
- 米・個人支出(PCE)
- CPIと似た経済指標です。Fedはこの指標を重視しているといことで、FXトレーダーは注目します。
- 米・ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)
- 毎月ミシガン州立大学が消費者のセンチメントを調査して数値化したものです。消費者が経済についてどのように感じているかを数値としてあらわします。
米ドル為替予測の考え方
このページで学んだ知識を結集し、米ドルの為替予測はどうやればよいのかを解説します。
米国経済指標の推移と、それ以外の経済大国の経済指標の推移を比べるところか始めるのが良い方法です。
例えば、米国の個人消費が伸びている一方、英国の雇用統計がボロボロだったなら、GBP/USDは中長期的に下がるのではないか?という為替予測ができます。
米ドルインデックスは米ドルが他の主要通貨に対して強いのか?というバロメーターになります。米ドルインデックスを継続して観察していれば、米ドルの動きを予測しやすくなります。
米ドルインデックスが上昇トレンドになっているなら米ドルの強さは本物だと言えます。
そうなれば、GBP/USDを空売りする際に自信を持ってエントリーできます。
(GBP/USDを空売りするとは、英国ポンドを売って米ドルを買うことです)
Fedが政策金利を引き上げたなら、米ドルの上昇を予測します。
米国の政策金利が上がることで米国の金融資産の利回りが上がり、投資資金が米国に集まりまるからです。
FRB議長は講演で金融政策の見通しを語ることがあります。そのスピーチの内容は米ドルの動向に大きな影響を与えます。
強気な発言は米ドル買いのシグナル、弱気の発言は米ドル売りのシグナルとなり得ます。
米ドル まとめ
以上、米ドルに関して詳しく解説してきました。
米ドルがいかに重要か理解して頂けたと思います。
米ドルの動きを把握出来るようになれば、FXトレードの精度が上がります。
まずは米ドルインデックスを観察することから始めてください。