トレードに似たリスクに関わるビジネスが2つあります。ベンチャーキャピタルと保険会社です。これら2つのビジネスからはトレーダーが学べることがたくさんあります。それは…
トレードというビジネスは、他のどんなビジネスと似ている?
トレードというビジネスは、リスクに関わるビジネスです。
トレードは他のどんなビジネスと似ていて、どんなビジネスを参考にすればよいのでしょうか。
トレードと似ていて、非常に参考になる2つのビジネスがあります。
それは、ベンチャーキャピタルと、保険会社です。
これらは両方とも、リスクと深く関わるビジネスです。しかし両者は全く違うタイプのリスクの取り方をします。
それぞれが、FXトレーダーにとってとても参考になります。
ベンチャーキャピタル
ベンチャーキャピタルは、次のような考え方のもとにリスクをとっていきます。
比較的小さな負けを繰り返しながら、大きな勝ちが時々あればよい。
小さな投資を繰り返し、そのほとんどで失敗しますが、時々大成功する投資があります。
99回投資に失敗しても、時々facebookやgoogleなどのような大成功するベンチャー企業に投資ができればトータルでは大きな利益になるのです。
たった一回の大きな成功で、それまでの99回分のロスを回収し、さらに利益になります。
たとえば、1000万円の投資を100回行い、そのほとんどは投資金額を回収できないかもしれないけれど、時々当たるビジネスがあって、そこから100億円稼げれば良いと考えているのです。
この考え方は、トレーダーの考え方に似ています。
勝率は低くてもよいから、リスクレワード比が2:1や3:1のトレードを狙っていくという考え方です。
リスクレワード比が2:1なら、40%の勝率があれば利益になります。
リスクレワード比が3:1なら、28%の勝率で利益になります。
しかし、実際のトレードの世界では、よっぽど相場観が良くなるまでは、リスクレワード比が2:1のトレードで勝率40%以上を実現するのは簡単なことではありません。
「40%の勝率なんて大したことないだろう」と思うかもしれませんが、
利食い20pips(ティック)、ロスカット10pips(ティック)の設定で、40%以上の勝率を上げることは簡単なことではありません。
勝率が低くてもリスクレワード比が高ければ大丈夫というのは、トレーダーならだれでも知っていることです。
しかし多くの人が分かっていないのは、そういうタイプのトレードで、たまにしか無い勝ちトレードを逃したときの辛さです。
リスクレワード比の高いトレードは、勝ちトレードが少なく、負けトレードの方が多いので、たまに来る勝ちトレードを逃してしまったら、本来トータルで勝てるはずのトレードが、簡単にトントンやマイナスになってしまいます。
「逃してしまう」というのは、単純にボーっとしていてエントリーを逃してしまうことはもちろん、エントリー直後にチビってしまって利食いが早すぎる場合も含まれます。
ほんのちょっとしたミスで、損益が大きく変わってしまう怖さがあるということです。
たとえば、10トレードするとしましょう。
4トレードが勝ちトレードで、100pips勝ちます。
6トレードは負けトレードで、50pips負けます。
この10回のトレードでの損益は、
100pips × 4トレード = 400pips
-50pips × 6 トレード = -300pips
トータルでは 100pipsの勝ちとなります。
これは、リスクレワード比2:1で、勝率が40パーセントのトレード結果です。
この一連のトレードで、勝ちトレードを一回逃してしまったらどうでしょうか?
100pips × 3 = 300pips
-50pips × 6 = 300pips
トントンになってしまいます。
2回の勝ちトレードを逃してしまったら、たちまち収益はマイナスになってしまいます。
10pipsのロスカットで1000pipsの利食いを狙うような、リスクレワード比100:1のトレードは、可能といえば可能です。上手い人は、そういうトレードでも長期的に勝てると思います。
しかし、めったに来ない勝ちトレードを逃してしまった場合のダメージがあまりに大きいので、そういうタイプのトレードは、精神的にとてつもなく難しいものとなるはずです。
ベンチャーキャピタルのビジネスのように、リスクレワード比が高い賭けをすることはトレーダーとして優れた考え方ですが、あまりに高いリスクレワード比を狙って、勝率が引くいトレードは、理論的には合っていても、現実的ではないということを覚えておきましょう。
その人の性格によりますが、人によっては、リスクレワード比1:1程度の設定で、勝率を60%程度を狙っていくトレードの方が、リスクレワード比2:1で勝率40%以上を狙うよりも向いているという場合があると思います。
さて、ベンチャービジネスは、小さな失敗を気にせずに、投資をしていくわけですが、それでも、一つ一つの賭けは、徹底的にリサーチし、意味のある賭けをしているはずです。
大きく成長する見込みがないビジネスには投資をしないでしょう。投資先のビジネスをあらゆる角度から徹底的に調べ上げ、投資するに値するかを見極めるはずです。
その慎重な姿勢は、トレーダーとして大いに見習う必要があります。
生命保険会社のビジネス
生命保険会社のビジネスは、表面だけ見ると、馬鹿げているように見えます。
10万円の保険料をもらい
もしその人が亡くなったら、5000万円の保険金を支払う
といったものです。
10万円しかもらっていないのに、5000万円も支払って、そんなんで儲かるのだろうか?と思いますよね。
しかし、生命保険の会社はめちゃくちゃ儲かっています。
生命保険のビジネスは、究極のハイリスク/高勝率のビジネスです。
生命保険会社が総力を挙げてやっているのは、勝率を極限まで上げ、リスクを限定するベストな方法を徹底的に考えることです。
我々トレーダーは、生命保険のビジネスから何を学べるでしょうか。
彼らがやっていることは全て我々トレーダーにとって役に立ちます。
1.リスクを限定する
生命保険会社は、常に、リスクを限定しています。
支払らう保険金の上限を明確にしているのです。
「もし被保険者が亡くなったら、5000万円を支払います」とは言いますが、
「もし被保険者が亡くなったら、無限に保険金を支払います」とは決して言いません。
保険会社は、保険金を支払うはめになったとしても、その額は常に限定されているのです。
これは、我々トレーダーが常にストップロス注文を入れておくのと同じことです。
私たちが学ぶべきは、一回一回のトレードで取るリスクの金額は、常に明確にしておくということです。
もちろん、ストップ注文を入れていても、かならずその金額でロスカットできることが保証されるわけではありません。値が滑って2倍、3倍の損失になることも、稀にですがあります。それでも、ストップ注文を入れている限り、無限に負けることはありません。
2.数をこなす
10万円の保険料で、もし被保険者が亡くなったら5000万円という賭けを1回だけするのであれば、危なっかしいです。その人が亡くなるかどうかに、そのビジネスの成否がかかってしまいます。
しかし、何十万件も保険の契約を売ることができたら、そのうちの何人かが運悪く亡くなってしまったとしても、保険会社はマイナスにはなりません。
この考え方は、我々トレーダーにとっても同じように重要です。いくら期待値がプラスのトレードだとしても、一年に1回しかトレードしないのであれば、そのトレーダーの収益は、その1回のトレードの運にかかっています。
しかし、何十回、何百回とトレードをするのであれば、一回一回のトレードの期待値がプラスであるかぎり、負けトレードをたくさん経験したとしても、最終的にトータルではプラスで終えることができる可能性が高くなります。
3.保険に入れる人を限定する
例えば、私がものすごく肥満で、毎日浴びるようにお酒を飲むアル中で、健康診断ではいつも成人病で引っかかっていて、さらにバイクを乗り回しているとしたら、保険会社は私に普通の人と同じ生命保険契約をさせてくれるでしょうか?
たぶん、無理でしょう。高額な保険料を支払うか、もしくは保険を断られるかもしれません。
なぜなら、生命保険会社は、私の健康状態の履歴や、医療履歴、生活習慣などを慎重に調べ上げ、リスクが高い人間でないかを判断するからです。こいつは危険だなと思ったら、契約を断るはずです。
5000万円の保険金支払いが発生する確率をできるだけ小さくするために、リサーチを徹底しているのです。
この慎重さを、我々トレーダーは見習わなければなりません。
我々トレーダーは、肥満で、アル中で、生活習慣病なエントリーを排除して、健康なエントリーだけを厳選することで、無駄な負けを極限まで減らす意識が必要だということです。
まとめ
FXのトレードと似たビジネスは
ベンチャーキャピタル
生命保険会社
それらから学べることは…
- 適切なリスクレワード比を考えること
- 賭ける前に慎重に調査すること
- 回数をこなすこと