FXの世界で米ドルの次に重要な通貨はユーロです。
ユーロというと、巨大なユーロ圏の統合通貨なので安全な通貨だと思われている方も多いかもしれません。しかし2007年の世界通貨危機以降、ユーロは「ハイリスクな通貨」として見られています。
この記事ではユーロの何が危険なのか、どんな特徴があるのか、ユーロ圏とはどんな地域なのかを解説します。また、ユーロドルやユーロ円の為替予測の方法についても解説します。
ユーロはハイリスク通貨
ユーロはいろんな意味で「政治的な通貨」です。
ヨーロッパのたいていの国々はユーロを採用していますが、全ての国ではありません。イギリスやスイスなどは独自の通貨を維持しています。
ユーロは1999年に導入され、2002年から実際に使われるようになりました。
ユーロを導入したユーロ圏の政治家たちの表向きの主張はこうでした。
「通貨を統合してヨーロッパがまとまれば、米国や中国などの大国に負けない」
大衆にはこのように説明されていました。
しかしふたを開けてみれば厳しい現実が待っていました。
歴史上、政治統合をすることなしに通貨統合をしてうまくいった例は無く、ユーロも例外ではなさそうです。
2007年の世界通貨危機以降、危機に次ぐ危機でもう危機に慣れっこになっています。
まずはPIGSから始まりました。PIGSとは自力では回復できない状況に陥ったユーロ圏の国々、ポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペインの頭文字をとってつけられた呼び名です。最近ではキプロスの銀行破綻もありました。
ユーロが存続できたのは、ECBというユーロ圏の中央銀行と、ユーロ圏で孤軍奮闘するドイツの支援のおかげです。これらのクッションが無ければ今頃ユーロは破綻していたことでしょう。
ユーロの成功に政治生命が掛かっている政治家がたくさんいます。
彼らは何としてでもユーロを存続させなければなりません。少なくとも彼らが政治家である間は。
要するに、ユーロは、政治家によって無理やり存続させられている通貨なのだというイメージが見え始めています。
このことはユーロの2つの特徴として表れています。
まず、これだけ多くの問題を抱えていますから、ユーロは「ハイリスクな通貨」として見られています。「安全」な通貨である米ドルとは真逆の性質です。
次に、ユーロはECBや政治家の発言に過剰反応する性質があります。ですから2007年以降のユーロは為替の大ベテランにも予測不能な値動きになったと言われています。
FXトレーダーとして私たちが覚えておかなければならないことがあります。
それは、ECBの要人や政治家の発言の目的はただ一つ、「ユーロを存続させること」だということです。
ということで、ユーロはかなりトリッキーな通貨になっていますが、その取引量は米ドルに次いで2位ですから、避けて通るわけにはいきません。しっかりとその動向をつかみ、チャンスがあればユーロドル、ユーロ円などで仕掛けていく事になります。
ユーロ圏ってどんな地域
欧州連合(EU)は28の国から成るヨーロッパの地域統合体です。
このうち、18の国がユーロを共通の通貨として使っています。この18の国をユーロ圏と言います。
ユーロ圏を構成する国々は
オーストリア、ベルギー、エストニア、キプロス、フィンランド、ドイツ、フランス、アイルランド、ギリシャ、ラトビア、イタリア、マルタ、ルクセンブルグ、オランダ、スロバキア、スロベニア、スペイン、ポルトガルです。
これらの国々は共通の通貨を使うだけでなく、欧州中央銀行(ECB)が行う共通の金融政策を共有します。
ユーロ圏のデータ
面積 :434万km2
人口 :3億3270万
人口密度 :76人/km2
欧州理事会議長 :ドナルド・トゥスク
通貨 :ユーロ
GDP :12兆9,050億ドル
主要な輸入相手国:中国、米国、ロシア、ノルウェー、スイス
主要な輸出相手国:米国、ロシア、スイス、中国、トルコ
ユーロ圏の経済
ユーロ圏のGDPはアメリカ合衆国と肩を並べる規模です。
その70%以上がサービス業から成ります。
ユーロ圏には米国に次ぐ魅力的な投資市場があり、世界中の投資家を惹きつけています。
ユーロ圏に属する国の中には大国ではない国もありますが、ユーロ圏というグループに属しているため、海外との貿易を効率的で有利に進めることができています。
ユーロ圏では貿易が盛んなので、ユーロの準備通貨としてのインパクトが大きくなってきています。ユーロ圏の国と貿易をするには、一定量のユーロを準備通貨として保有しているとお得に取引できるからです。
ユーロ圏の金融政策を行っているのは欧州中央銀行(ECB)です。
ユーロのあれこれ
ユーロは”fiber”と呼ばれたり、”anti-dollar”と呼ばれてるすることがあるようです。
日本ではそのまんま「ユーロ」と呼ばれています。
FXにおいて、ユーロと米ドルの通貨ペアであるユーロドル(EUR/USD)の取引量が一番大きいです。
ですからユーロドルは大きな注文でも値が滑りにくく、スプレッドも狭いのでデイトレードやスキャルピングに向いています。ユーロドルを専門にトレードするデイトレーダーやスキャルパーも少なくありません。
ユーロはロンドンセッションで最も活発にトレードされます。
東京セッションやニューヨークセッションの後半には取引量が落ちます。
FXのセッションについてはこちら
ユーロドルは他の金融商品と密接な関係があります。
例えば、ユーロドルはS&P500と逆に動きます。(逆に動くことを逆相関性があると言います)
S&P 500とは、米国の株式市場のインデックスです。日経225の米国版みたいなものです。
ただし、このユーロドルとS&P500の逆相関性は2007年の世界通貨危機以来崩れました。
EUR/USDはUSD/CHF(ドルフラン)とも逆相関の関係にあります。
ユーロの値動きに大きく影響する経済指標のまとめ
- ユーロ失業率
- ユーロも米ドルと同じで失業率に強く反応します。とくにドイツとフランスの失業率の影響が強いと言われています。
- GDP
- ユーロ圏の国内総生産はドイツのGDPに大きく左右されます。
- ユーロ圏・消費者物価指数(CPI)
- 欧州中央銀行(ECB)の主な目的の一つはユーロ圏の物価を安定させることです。ですから、CPIのような物価指数がECBの目標値から離れた場合には、ECBが何らかの金融政策をとる可能性が高くなります。
- 財政赤字
- ユーロ圏加盟の条件として、過剰財政赤字でないこと(財政赤字がGDP比で3%以下、債務残高GDP比60%以下)というのがあります。ユーロ圏の財政赤字には注目です。
- 独・IFO景況指数
- 日銀短観のドイツ版です。毎月発表されるドイツ経済の先行指標となります。ユーロ圏におけるドイツの影響力は大きいので世界中が注目しています。
ユーロを動かす原動力
ユーロ圏の経済成長
ユーロ圏全体、もしくは構成する単独の国に経済成長があればユーロには好材料となります。
特にフランスやドイツのGDPが予想を上回っていた場合にはユーロが上がる材料となります。
米ドルの影響
米ドルとユーロは密接に関係していますので、米国の経済指標はユーロにも大きなインパクトを与えます。
米国とドイツの国債利回りの差
米10年国債とドイツ10年国債の金利の差はEUR/USDの方向性を決める要因となり得ます。
米10年国債とドイツ10年国債の利回りに差があれば、利回りの良い方にEUR/USDは進みます。
ユーロドルの為替予測の考え方
基本的には、ユーロ圏の経済指標が予測よりも良ければEUR/USDは上がるだろうと考え、EUR/USDの買いを狙うのが一般的な考え方です。
逆にユーロ圏の経済指標が予測よりも悪ければ、EUR/USDが下がるだろうと考えて空売りを狙うのが一般的な考え方です。
EUR/USDの値動きは投資家が米ドルに強気なのか弱気なのかを示します。ですから米ドルの動向を掴めていれば、EUR/USDを上手くトレードできます。
たとえば、米国の経済指標が予測値よりも良かったので米ドルが上がると考えたなら、EUR/USDを空売りすることになります。EUR/USDを空売りするということは、ユーロを売って米ドルを買うことだからです。
EUR/USDの特徴は、押しや戻しの値動きが出やすいことです。
EUR/USDの場合、動き出した方向に飛び乗るよりも、フィボナッチリトレースメントなどへの押しや戻しを待ってエントリーする方が良い結果になることが多いようです。
もしEUR/USDとは一味違った通貨ペアをトレードしたいなら、EUR/JPY、EUR/GBP、EUR/CHFといった通貨ペアもあります。最近はどの通貨ペアもスプレッドが狭くなっているので、どの通貨ペアでも問題なくデイトレードできます。特にEUR/JPYのスプレッドは1pipsを切っている業者もありますのでスキャルピングをすることも可能です。
EUR/JPY(ユーロ円)はEUR/USD(ユーロドル)よりもボラティリティ―が高いです。ボラティリティ―が高いとは値動きが激しいということです。とくに東京セッションで活発にトレードされます。
EUR/GBPやEUR/CHFはレンジ相場になることが多い通貨ペアです。逆張りが好きなトレーダーには相性が良い通貨ペアです。EUR/CHFは流動性が低く、レンジ相場で乱高下しやすいので要注意です。
ユーロ まとめ
以上、ユーロについて詳しく解説してきました。
ユーロが米ドルに次いで重要な通貨であること、またとても政治的な通貨であることを理解して頂けたと思います。
ユーロは”anti-dollar”と言われるくらいですから、米ドルと密接に関係しています。
FXトレーダーなら絶対に避けて通れない米ドルを理解するためにも、ユーロについての理解も深めるようにしましょう。