ここで紹介するラウンドナンバースキャルピングは、相場を作らなければならない業者の弱みを突く戦略です。一般投資家が業者に対して優位性を持てる数少ない瞬間です。この手法は業者にとっては嫌な手法でしょうから、あまり広めてはいけないかもしれません。興味のある方だけ、こっそり読んでください。
このスキャルピング手法では、ラウンドナンバー付近で指値注文を使ってエントリーします。シンプルな手法なのでFXの初心者にも挑戦できるスキャルピング手法です。
FX業者は相場を作ってくれている
純粋なECN業者以外のFX業者は顧客と反対売買をして相場を作ります。
顧客の注文をインターバンクに流すのではなく、業者が顧客の注文を呑む形です。
反対売買をするということは、顧客が利益を上げれば業者が損をし、顧客が損をしたら業者が儲かる関係です。
業者は顧客の反対売買をしているので、顧客が大きく稼ぐと大損してしまいますが、インターバンクマーケットでヘッジしているので、大抵の場合は問題ありません。
理解しておいてほしいのは、FX業者は顧客のために相場をつくらなければならないということです。それが彼らの仕事です。
その見返りとして、スプレッド分の収益を上げます。
そして、ときどき本来のインターバンクマーケットの値動きよりもほんの数pipsだけ業者の有利な方向に余計に値を動かしてストップ狩りをすることもあります。
しかしそれを嘆いていはいけません。業者がいてくれるから我々はFX相場でトレードができるのです。だから感謝すべきです。
とはいっても、あなたがいつもストップ狩りの餌食になる必要は全くありません。他のトレーダーがストップ狩りになるときに、反対側について利益を受け取る側に回ればよいのです。
ラウンドナンバーでは感情が渦巻く
FXをしばらくやっているならだれでも気づくことですが、チャートは重要な数字を試しに行きます。そこまではいかないだろうなと思っても、結局はそこまでいくのです。それがどんな数字なのかは関係ありません。トレンドラインかもしれないし、主要なフィボナッチラインかもしれないし、高値/安値かもしれません。もっとも重要なのはきりの良い数字、ラウンドナンバーです。
ラウンドナンバーとは、きりの良い数字のことです。
FXの場合、私は50pips区切りできりの良い数字をラウンドナンバーと考えています。
100pips区切りをラウンドナンバーとして扱う人もいると思います。いずれにしても、霧の良い数字のことです。
上昇している局面でショートポジションを持っている人は、含み損を抱えながらも、意味のある数字を超える位置までは耐えようとします。多くの場合、その数字の少し上にストップ注文を置いて耐えます。なんとか持ちこたえてくれと願いながら。
また、新たにショートポジションを作ろうと思っているトレーダーは、ラウンドナンバーの少し下でエントリーするでしょう。
ラウンドナンバーを背にして売るのです。ラウンドナンバーは超えてこないだろうと考えるのです。
逆に、ラウンドナンバーを超えてきたら、順張りで買いたいというトレーダーもいるでしょう。
このように、いろんな立場の人がラウンドナンバーを意識しています。
いろんな人が意識すると、そこではいろんな感情が渦巻きます。
いろんな感情が渦巻くと、その感情を利用して機関投資家や業者は罠を仕掛けてきます。
ラウンドナンバーでよくある値動きは次のようなものです。
まず、ラウンドナンバーの直下で何度か上げ渋ります。
売り手がラウンドナンバーを超えないように守っているのと、新規の売りたい人がいるからです。
しばらくすると、一気に買われてラウンドナンバーが突破されます。機関投資家がストップ狩りをやってくるからです。(そうでないこともありますが)
ラウンドナンバーの上にストップ注文を置いていたトレーダーは損切になり、売っていたトレーダーは「あーダメだったか…」とため息をつきます。
そして次の瞬間、気がつくと一気に値が落ちてきてラウンドナンバーの下に逆戻りしています。たった今ストップにかかった売り手は「なんでそうなるんだ!」と叫びます。
自分のポジションが損切になった瞬間に反転する。
あなたもこういう目にあったことが何度もあるのではないでしょうか。おそらく、誰もが何度も何度も経験していることだと思います。
ストップ狩りを逆手にとれ
これはストップ狩りの値動きです。
このストップ狩りはインターバンク市場のレベルで起きる場合もありますし、特定のFX業者が作っている相場の中だけで起きることもあります。
インターバンク市場ではラウンドナンバーよりも上には上がっていないのに、特定の業者のレートだけはほんの少しだけラウンドナンバーを超えていて、その業者で取引しているトレーダーだけがストップにかかってしまう、といったことです。
もしくは、ラウンドナンバーを超えるにしてもどれだけ超えるかは業者によって若干違うということです。最近は極端な差がつくことは少なくなりましたが、昔は「そりゃーねーだろ!」というレベルのことがしょっちゅうあったようです。
さて、ラウンドナンバー付近でのこのような理不尽な値動きがそんなに多いのであれば、それを利用して稼げばいいではないかと思うのは当然のことです。そして実際に上手くやる方法があります。
ラウンドナンバースキャルピング手法の詳細
ラウンドナンバースキャルピング手法の詳細を解説していきます。
導入編を理解していることを前提に続きを書いていきます。
固定スプレッドの業者を選ぶ
この手法はどの業者でも可能ですが、固定スプレッドを謳っている業者で特に有利です。なぜなら、そのような業者でこの手法をトレードすると、他の業者でトレードしていたのでは約定できない価格で約定できてしまうことがあるからです。
業者がストップ狩りをするためにラウンドナンバーよりも上に価格を吊り上げた場合、実際のFX相場はその価格を付けていないのですが、ある業者のシステムでその値段が付いた場合、固定スプレッドをうたっている業者なら指値売り注文を約定させざるを得ないのです。
業者が若干のレート操作で価格を吊り上げた場合、実際にはインターバンクマーケットでは付いていない価格を付けることでストップ狩りをするのですが、その代わり、その値段で出されている指値売り注文も約定させざるを得ないということです。
業者の手口を逆手に取れるのはこのような状況だけです。
ラウンドナンバースキャルピングのメリット
ラウンドナンバースキャルピングのメリットは3点です。
リスク(負け金額)が限定されていて、ストップを入れる位置も分かりやすいこと
この手法では、トレードが上手くいかなかった場合の負け金額が明確です。スキャルピングの場合はあわただしい中で注文をいれるので、間違えも起きやすく、想定外の損失になってしまうこともしばしばあります。
しかしこの手法の場合は、エントリーもロスカットも入れる位置が最初から決まっているのでミスが起きにくいです。トレードマネジメントは最も大切な要素なので、そこが分かりやすいのは初心者にとって大きなメリットです。
大口の方向/業者の方向に付けることは最大のメリット
テクニカル指標を使ったエントリーの場合、大口の方向についているという根拠は全くありません。過去の傾向から優位性を見つけ、それに従ってエントリーするだけです。
しかしこの手法の場合、大口やディーラーが仕掛ける罠を逆手に取るという考え方でエントリーするので、全く別次元の手法になります。
勝負が速い
この手法は10秒程度~長くても15分程度で完結します。
ラウンドナンバースキャルピング手法のトレードアイデア
ラウンドナンバーでは、大口や業者がストップ狩りを狙ってくることが多い。そこで、その値動きを利用して有利な価格でエントリーし、ストップ狩りが終わったあとの値動きで速攻利食いしよう、という考え方です。
売りの場合は、ラウンドナンバーを抜けてストップ狩りが行われた後、ラウンドナンバーの下に戻る急激な値動きを取ります。
逆に買いの場合は、ラウンドナンバーを割り込んでストップ狩りが行われたあと、ラウンドナンバーの上に戻る急激な動きを取ります。
ストップ狩りが起きる価格帯で指値注文を使って分割エントリーし、一瞬の反転をきっちりと取ります。エントリーも利食いも指値注文を使います。
以下では売りのパターンを解説していきますが、買いの場合も売り買いが逆になるだけで全く同じ考え方でトレードできます。
エントリーチャンスを識別する
5分足や15分足チャートを確認し、ラウンドナンバーが頭上にある状況で、一方的に上げているチャートを探します。
ただし、全くプルバックを入れない程に一方的で強い値動きの場合にはエントリーを見送ります。陰線を全く入れずに陽線だけで上げてくるような場合は見送るということです。
一旦買われ過ぎになっているのが理想です。ここまで読んでくれたあなたには、大口や業者がラウンドナンバーの上に溜まったストップを狩ろうとしているのを感じ取れるはずです。
これはユーロドルの5分足です。
エントリーとトレードマネジメント
このような状況を見つけたら、ラウンドナンバーでストップ狩りの動きが出やすい価格帯に売り指値注文を入れて待ちます。
エントリー
エントリーは3分割で入ります。
1回目の売りはラウンドナンバーで1枚。
2回目の売りはラウンドナンバーの5pips上で2枚。
3回目の売りはラウンドナンバーの10pips上で2枚。
1、2、2で5枚売ります。
(このような割合であれば枚数はなんでもOK)
ロスカット注文
ロスカット注文はラウンドナンバーの20pips上に置きます。そこを超えてしまったら迷わず全部ロスカットです。
利食い
利食いはラウンドナンバーの5pips下です。
売り2以降まで約定できているなら、最後の1枚はトレーリングストップで利益を伸ばします。
ストップ狩りが起きた後には、反対側に向かって大きな値動きになることが少なくないからです。だからポジションの一部で利益を伸ばすのです。
利益を伸ばすには、安値を切り下げるたびにスイングハイにストップ注文を下げていけばよいです。
時間制限
最初の売りから15分たった時点でまだ利食いできていなければ、利食い注文を同値に動かします。同値とは、売りポジションの平均値のことです。
その時に含み益になっていたら、全て成り行きで利食いします。
先程の例の続きを1分足で見てみましょう。
ストップ狩りが想定される価格帯を狙って3分割で売ります。
売りポジションの平均値は1.356です。
エントリーしたらすぐにロスカット注文と利食い注文を入れます。
ロスカットはラウンドナンバーの20pips上
利食いはラウンドナンバーの5pips下です。
理想なのはラウンドナンバーよりも上の値動きは一瞬で、速攻で下げてくれることですが、想定しているよりも長く上げが続くことともあります。エントリーから15分たっても利食いできていない場合には、迷わず同値撤退狙いに切り替えます。
この場合は15分の時点で若干の含み益になっていますので、迷わず成り行きで利食いします。1.1354で利食いです。
この場合は最終的には下げているので、後から見ると残念ではあります。しかし15分しても落ちていないということは、上昇がストップ狩りではなく、本格的な上げである可能性が高まるので仕方ありません。
さて、このエントリーで5枚全部売った時の平均値が1.356、ロスカットが1.370なので、ロスカット幅は5枚で14pipsとなります。一方で利食いは5枚で11pipsです。(最後の1枚は利益を伸ばしますが、伸ばせるかどうかは分からないので全ポジションを最初のターゲットで利食いしたと仮定して計算)
これだと利益の11pipsよりもリスクの14pipsの方が大きいので、リスクレワード的に良くないのでは?と思うでしょう。
しかしこのエントリーは70%程度の勝率が期待できること、そして利食いできない場合でも、多くの場合に同値撤退ができるので、期待値はプラスになります。
自分の目で検証してみることが大切
この記事の内容を鵜呑みにせず、一度チャートの100pips区切りか50pips区切りのランドナンバーラインを引いてみて、その付近で何が起きているのか検証してみてください。
いつもうまくいくわけではありませんが、高勝率で取れそうなことに気づくと思います。自分の目でじっくりと検証することが何よりも大切です。私の戦略をベースにして、分割エントリーの方法や利食い/損切りの値幅を工夫して自分なりの戦略を作り上げてください。
注意点
ラウンドナンバースキャルピングはどんな時でも片っ端からエントリーすべきというわけではありません。エントリーを見送るべき場合もあります。
ラウンドナンバーに向かう値動きが強すぎる場合
ラウンドナンバーに向かう値動きの勢いがあまりにも強い場合にはエントリーを見送ります。
ラウンドナンバーに向かう上昇がほとんど陽線ばかりで構成されている場合には、逆張りするには上昇が強すぎます。陽線ばかりということは、プルバック(押し)が入りにくいということです。
指標発表の瞬間
ラウンドナンバーの付近で指標発表になるような場合はエントリーを見送ります。
ラウンドナンバーでストップ狩りが起きるとしても、指標発表の時には値動きの値幅が大きくなるので20pipsのロスカットでは簡単にロスカットにかかってしまいます。指標発表の瞬間にラウンドナンバーの位置が離れていれば、エントリーを狙えます。
ラウンドナンバースキャルピング手法まとめ
ランドナンバーでは多くのトレーダーの思惑が交錯する。
業者や機関投資家はラウンドナンバーで頻繁にストップ狩りを狙ってくる。
その傾向を逆手にとるスキャルピング手法がある。
FX業者は顧客のために相場を作っている。
彼らはラウンドナンバー付近で若干レートを操作してストップ狩りをすることがある。
ストップ狩りの犠牲者になるのではなく、そのことを逆手にとって利益を上げるのが賢い方法。
この手法は固定スプレッド業者を使うと有利なエントリーができる。
ラウンドナンバーの外側、ストップ狩りが行われる価格帯に指値注文を入れて分割エントリーする。
ストップ狩りがどこで止まるかは分からないので分割エントリーが有効。
ストップ狩りが終了すると、急激な値動きでラウンドナンバーの内側に戻ってくるので、そこできっちりと指値で利食いする。
ポジションの一部は利益を伸ばす努力をする。
ラウンドナンバーでストップ狩りが起きた後には、逆方向に強い値動きが出ることが少なくないからだ。
この記事の内容を鵜呑みにするのではなく、実際に自分の目でチャートを見て検証することが大切。
分割エントリーの枚数、利食いやロスカットの枚数は自分なりにアレンジすることをお勧めする。
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